The Vinesのデビューアルバム『Highly Evolved』。
デビュー盤で世界的なヒットを打ち出し、サイケ＆ポップな曲調に気怠い咆哮と荒々しいサウンドが合わさり"The Beatles meets Nirvana"と評された。

2000年前後から始まったガレージロック・リバイバルに代表される一つのバンドとして知られるが、ヴォーカル・クレイグの狂気じみたステージングが凄まじい個性を放っていたと憶えている。

Highly Evolved

1. Highly Evolved
2. Autumn Shade
3. Outtathaway
4. Sunshinin'
5. Homesick
6. Get Free
7. Country Yard
8. Factory
9. In the Jungle
10. Mary Jane
11. Ain't No Room
12. 1969

ニューメタルブーム後にガレージロック・リバイバルが始まり、その差の激しさに戸惑いを感じていた。
どちらも好みでないバンドが多かったし、一時の流行りに乗ることをカッコ良いと思えない年でもあった。
個人的には"90年代ロックに取り憑かれたスマパン大好きオルタナ世代"であり、新しいものやサウンドに興味を持つことも少なかった時期。

そんな中でも2002年にリリースされた『Highly Evolved』は、個人的年間ベストロックアルバムの上位に食い込んできた。
決してリバイバルではなく、繰り返しではない新たな刺激をシンプルに真正面から食らったのでした。

Highly Evolvedのサウンド

確かにビートルズに強い影響を受けて育った現代音楽なのだが、ニルヴァーナという名のスタンドを持っているかの如く時に姿を現す。
そこには儚さ・脆（もろ）さを纏ったギリギリ危険な人間らしさを強く感じ、まるで10代の好奇心旺盛な時期にちょっとヤりすぎてしまう行為のように感じ取れた。
しかし皆、人の子。
歪んだストラトサウンドではあるが、軸にあるのはポップで美しい旋律なのである。

人はギターを始めた頃から年を取らないと言われる。
ロックに駆られた初期衝動は永遠に廃れない、という意味だがThe Vinesの音楽には素直にその衝動が詰められていると思えた。
シンプルな曲の中に、いくつかの強い影響を感じながらも人間臭いオリジナリティが存在する。

実際にクレイグは精神的に不安定な問題を抱えており、コミュニケーションが苦手だったり暴れてしまったり…繊細な心が時に暴れだす、というのを音楽にも反映しているとも取れる。
言ってみれば人生や生き方というのをそのまま曲に詰められているんだなと思えた。
それこそが"ザ・ロック"であって巷のメインストリームポップでないところである。

文章で書いてみると大袈裟で衝撃的に思えてしまうが、聴くと素直にそう感じられたのでした。
『Highly Evolved』以降もカッコ良くロックし続けているThe Vines。
メンバーチェンジは多いが、軸は変わっていない。