耽美と狂気のエレクトロサウンドに研ぎ澄まされる神経

イングランド出身のDepeche Mode。
このバンドを表すならば「耽美と狂気」。
聴けば血管は脈打ち、少し刺々しい物質が脳から分泌されているかのようにゾクゾクさせられる。

『Exciter』は10枚目のアルバム。
2001年に発売され、Depeche Modeの他のアルバムとは少し異質な作品と言われている。
プロデューサーにテクノユニットで活動するマーク・ベルを起用したことで先進的なデジタル要素が盛り込まれていると同時に抑制の効いたサウンドが展開されていることからそう言われている。

しかしDepeche Modeの持つ色気・暗さ・激しさは強調され、より楽曲を立体的に表現しているように思う。
またサウンドが非常にクリアーでヒーリングミュージックのように耳馴染みが良い。
もちろん心臓を突き刺すような歪んだサウンドもあり、ブッ飛んだ感覚は非常に高次元だと感じられる。
ソングライティングは全てギタリストのマーティン・ゴアが行っている。

デジタルサウンドとアコースティックギターの音色、デイヴ・ガーンの唄声が官能的な世界観を作り出している①『Dream On』。
非常に繊細なサウンド作りに神経が刺激される「何かのクスリ」のような曲。
②『Shine』にて身体は宙を浮き、暗い闇の中を漂う。
ダウナーながらもアッパーな気分になれる③『The Sweetest Condition』。
完全に表現がイケない方向に行ってしまっているが、このアルバムはまさにそんな表現がぴったりなのだ。いや、Depeche Mode自体がそういうバンドだからだろうか。
是非お酒を飲みながら聴いてみて欲しい。飛ぶぞ。

全体的にはそういった感覚が覆っているが⑤『ザ・デッド・オブ・ナイト』はどこか『Personal Jesus』を彷彿とさせるリズムにヘヴィなサウンドを響かせる。
歪んだ音が合わさることでインダストリアルの狂気と心地よさを感じる。
これをスタジアムで直接観ることができたら多分ホントに飛ぶ。

⑧『Comatose』は様々なサウンドが織り交わって形成されている。
好きな人は分かるかもしれないがBUCK-TICKっぽいと感じる部分がある。
『COSMOS』や『SEXY STREAM LINER』あたりだろうか、浮遊感と水中感のどちらでもあるシンセサウンドが彷彿させる。
その他の曲もBUCK-TICKに通ずるサウンドやプレイを感じられるところがあるので興味があったら探すのも楽しいかも。

リードトラックの⑨『I Feel Loved』は危険な香りのするフレーズと蠢くデジタルサウンドが不気味さを引き立てるがアップテンポで”らしい”曲。
発売当時、深夜のTVでMVが良く流れていたのを思い出す。

⑩『Breathe』や⑬『Goodnight Lovers』はオールディーズのようなメロディーにデイヴ・ガーンの歌唱力の高さが再確認させられる。このメロディーをジャズに乗せて聴いてみたい気もする。
とてもドラマティックで心地の良いサウンドで締めくくられている。

否定的な評価をした媒体が多い作品でもあるのだが、人によってはとても聴き応えのある一枚である。
残念ながら2022年5月26日にキーボードのアンディ・フレッチャーが大動脈解離により亡くなられたと伝えられました。
今後の活動がどうなるのかわからないが、他のアルバムも併せて聴き続けようと思う。