強烈なインパクトを与えたインディーズからの宣戦布告

Dwellers of a Sandcastle　（ドゥウェラーズ・オブ・ア・サンドキャッスル）
La'cryma Christiがインディーズの頃、96年にリリースしたミニアルバムだ。

元々『Warm Snow』というミニアルバムを制作しリリースしていたが、制作費用や時間が足りず満足のいく作品に仕上がらなかった。
それをメジャー流通で再レコーディングしたのが『Dwellers of a Sandcastle』。
収録曲は変わらないが、サウンドは大幅に向上し、編曲されて展開やリフがバージョンアップしている。
このアルバムがインディーズとは思えない程の出来で、生温い音楽界にLa'cryma Christiの存在を知らしめた。

Dwellers of a Sandcastle

1. Warm Snow
2. Forest
3. A.S.I.A
4. カリブで生まれた月
5. Poison Rain

94年～95年、音楽雑誌の広告でLa'cryma Christiを知ったのだが、妖艶なルックスと当時好きだったL'Arc～en～Cielのようなバンド名が気になり、La'cryma Christiが最初にリリースした『Siam's Eye』を手に入れた。
限定リリースだったので入手困難であった。（ちなみに3rdプレスでした）
プログレ要素を散りばめた難解なリフと展開、そして演奏技術の高さにビックリした。
当時聴いていたどのバンドよりも圧倒的に難しいことをしており、それはTAB譜を見なくても分かる程のものだった。
拍子、リフ、展開、、、全てが初体験でトリップしたのだ。

その後リリースされた『Warm Snow』故に『Dwellers of a Sandcastle』では、高い期待値を優に超えてきた。
今まで聴いてきた「定番」はどこにもなく、此処にしか存在しない音楽だった。

神秘的で独特な世界観を持つ詩、変わったリフと粘っこいギターユニゾン、追いきれないリズム隊。
とにかくプログレッシヴでイノベート。

完全に虜にされたと同時に『Siam's Eye』で掴みきれなかった実態をまたも掴みきれなかった、という感じでもあった。
例えば、彼らは何に影響を受けてきたのか。
身長の高い人に「何を食べてここまで大きくなったの？」というように、「何を聴いて来てこんな曲が出来たの？」みたいな。
プレイから紐解けないくらい謎めいた技術を持つアルバムであった。
（後にメタル上がりという事が判明し、少し納得した感もあったが...）

様々な要素を分解しては結合しての繰り返しを努力したのだろうが、頭の中にある理想を具現化することは簡単なことではない。
各々のパートを分解してみれば何て事のないものかもしれないが、La'cryma Christiのアンサンブルは綿密に計算高く構成されたプロフェッショナルの極みであった。
そこは是非聴きながら体感して欲しい。
各メンバーのスキルの高さに脱帽するのは間違いない。

リリース後には「Forest」がドラマのタイアップ曲としてシングルカット。
「Warm Snow」「Forest」「カリブで生まれた月」「偏西風」のMVを収録したVHSをリリースし、97年にメジャーデビューを果たした。

その後十数年活動を続けたLa'cryma Christi。
初期の作品の楽曲は色褪せることなく輝き続け、愛され続けた。
誰も真似できない唯一無二の出力は"永遠"であり、"未来"への"航路"を照らしていた。

ちなみにLa'cryma Christiはツインギターであるが、ギター出力をほぼ完全に左右で振り切っていることが面白い。
立ち位置は左がKoji、右がHiroでありCDを再生して聴こえるギターもその通りである。
しかしインディーズの作品は逆になっており自分がメンバー目線になり左がHiro、右がKojiとなっている。