90年前後からのグランジムーヴメントの火付け役となったNirvanaのクリス･ノヴォセリック、Soundgardenのキム･セイル、Pearl Jam/Soundgardenのマット･キャメロンらが2022年に結成したバンド「3rd Secret」(サード・シークレット)。

メンバーは、
Jennifer Johnson：シンガー
Jillian Raye：シンガー（ノヴォセリックのグループGiants in the Treesのメンバー）
Kim Thayil：ギタリスト（Soundgarden）
Bubba DuPree：ギタリスト（80年代のハードコアバンドVoidのメンバー）
Krist Novoselic：ベーシスト（Nirvana）
Matt Cameron：ドラマー（Pearl Jam/Soundgarden）

女性2人のシンガーからなるバンドだが、グランジ好きからすると非常に興味深いバンドだ。

デビューアルバム『3rd Secret』

90年代にタイムスリップしたかのような懐かしいサウンドと響き。
当然当時よりサウンドはクリアになり、より進化しているのだが曲調が当時の土臭さ・混沌とした背景を思い出させる。
しかしながら美しさも感じて、映画を見ているかのような感覚になる。
これが女性シンガー2人からなる魅力なのかもしれない。

アコースティックギターのアンサンブルが美しい『Rhythm of the Ride』から始まり『I Choose Me』へ。
ん？これはAlice in Chainsか？と思わせるギターリフとヴォーカルが特徴的な”もろ”グランジ曲。「～yeah」という箇所はまさに『Again』。
ここでグランジ好きは脳内エンドルフィンが出てくることだろう。
シンプルながらもバランスよく織り交ざったサウンドが心地よく脳を刺激してくれる。

Stone Temple Pilotsを彷彿させる3曲目の『Last Day of August』。
男性シンガーを期待していた声が多かったが、確かに3rd Secretでスコットウェイランドが歌っていたらドンハマりだろう。叶わぬ事だが…。

男性シンガーだったら全体的に力強く明るい印象になり、もっとメジャー感のあるものになったんじゃないかと思う。
というのも、この女性シンガーの歌い方が良くも悪くもインディー感が強く『気怠さ』を演出している。
6曲目の『Live Without You』はカートコバーンのような『気怠さ』を特に感じる。
この曲はポップ性が高い。カートコバーンがサイモン＆ガーファンクルを歌っているような、そこにシンガーの気怠さが全体的にトーンを落としグランジ色を強調している。

7曲目の『Right Stuff』はヒッピーソング？という印象。田舎の山奥で”キメキメ”状態で歌っていそうなイメージ。クリスのアコーディオンが呑気で愉快なムードを作り上げていおり、お酒を飲みながら聴きたくなる一曲。
この曲は女性シンガーならではの良さが活きている。

10曲目の『Somewhere in Time』はSoundgardenの『Pretty Noose』を思い起こさせる。
アルバムの中ではポップな位置付けにある曲でゆっくりなテンポながら飽きさせないギタープレイが印象的。

全体的にはグランジ特有のマイナーを強調した退廃ロックという印象。
クリスのアコーディオンが時にノスタルジーでサイケな印象も残す。

様々なバンドを引き合いに出してしまったが、本人たちのルーツを辿れば当然のこと。
グランジという中で偏っているわけではなく、様々な要素･歴史が詰まっている。
ロックファンには是非聴いてみて欲しい。

クリスノヴォセリックとマットキャメロンがメインソングライターということだが、Soundgardenではないし当然Nirvanaでもない。

これは新たなグランジロックである。