メタル革命、ロス・ロビンソンの主な功績
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ニューメタルのゴッドファーザーと呼ばれる音楽プロデューサー、ロス・ロビンソン(Ross Robinson)。
94年、ヘヴィメタル界に衝撃を与えたKoЯnのデビュー作『KoЯn』によって世界的に名前が広がりました。
以来様々なバンドを成功へ導き、90年代~2000年代初頭のラウドロック・ムーヴメントの一端を担っていました。
ロス・ロビンソンの特徴は『生々しく荒々しい音』。
粒の揃った細かな歪みでカッチリまとまった音が多い中、ロス・ロビンソンがプロデュースする多くはピッキングのニュアンスが伝わりやすいゴリゴリでバキバキなエグいサウンドが多い。当然ミキシングによって差はあるが、同アーティストの他作品とを比較するとそのように感じる。
それもそのはず、『KoЯn』の影響で「そのサウンドを出したい」という依頼が多かったそう。
そんな一時代を築いたロス・ロビンソンによる名盤・代表作をザックリとまとめてみました。
KoЯn
94年のデビュー作『KoЯn』、続く2nd『Life Is Peachy』(96年)はあとにも先にもロス・ロビンソンの最たる代表作だろう。メタル界に多大な影響を与えた名盤であり、多くのフォロワーが生まれた。ロスは当時、6人目のメンバーと呼ばれていた。
続く3rd『Follow The Leader』は、真似するフォロワーバンドが多くなってきている現状を嘆いた皮肉に満ちた作品になっており、プロデューサーやスタッフを変えサウンドも一新している。
2010年には14年振りにタッグを組み『KoЯnⅢ: Remember Who You Are』を制作。
「原点回帰」をコンセプトとした、1st『KoЯn』当時の音を追求した作品になっている。当時よりはスッキリまとまっているが生々しい音に回帰したサウンドである。
アルバムタイトルの"KoЯnⅢ"とは「このアルバムがKoЯnにとっての本当の3rdアルバム」という意味を持つ。
やはりこのコンビは別格だ。
Sepultura
96年にリリースされた6th『Roots』をロス・ロビンソンがプロデュース。
前作『CHAOS A.D.』で世界的に名が知れ渡り、より本格的なブレイクが期待されていた。私がSepulturaを知ったのもこの頃だった。
『CHAOS A.D.』が流行り、ブラジルの変わったメタルだなぁと聴いていたが『Roots』は超えてきた。生々しく荒れ狂った激情型メタルの迫力が増している。
2013年には再び『The Mediator Between Head and Hands Must Be the Heart』でタッグを組んでいる。
Limp Bizkit
Limp Bizkitのデビュー作『Three Dollar Bill, Yall$』。
KoЯnの弟分といった触れ込みで売り出されていて、瞬く間に売れていった。
当時は既に"ロス・ロビンソンらしい"サウンドが確立されており、その注目度も相まっていたのだろう。凶暴なゴリゴリのリフの迫力は衝撃的だった。
ラップメタルというのは当時新しいジャンルでキッズには大ウケ。
ウェス・ボーランドのギタープレイやパフォーマンスが好まれる大きな要因だと思うが、個人的にはラップメタルというのは苦手。ビッグマウスのフレッドは後にバンドの価値を下げてしまったが…。だが、ウェスはカッコイイ。
Soulfly
Sepulturaを脱退したマックス・カヴァレラが結成したSoulflyのデビュー作『Soulfly』。
息子の死やバンドからの脱退/確執などを経験し、怒りや悲しみを抱えていたマックスの感情をダイレクトに伝えるにはロス・ロビンソンの手腕が適しているだろうと思える。
ローチューニングのギターの弦のたるみが伝わるヘヴィなサウンド。
他の作品も聴いているが、Soulflyはバキバキなサウンドが似合うと思う。
1st『Soulfly』にはFear FactoryのメンバーやLimp Bizkitのフレッド・ダースト、DJリーサル、Deftonesのチノ・モレノなどがゲスト参加している。
Machine Head
ラウドロック勢が増していた99年、Machine Headの『The Burning Red』はリリースされた。PANTERAのようなスラッシュ色の強いメタルバンドであったMachine Headからするとロス・ロビンソン起用は少し意外だった。他作品とは異なる"時代の流れに沿った"ような仕上がりであったが、ヘヴィでキャッチーで個人的にはビンゴ。
見た目がスタイリッシュ(?)に変化していたり、特にギタリストのアールー・ラスターの魔術師のような印象が好きだった。
当時のインタビューでロス・ロビンソンは『珍しく「KoЯnのようなサウンドにはしないでくれ」と注文された』と他のバンドとは違うアプローチであったと語っていた。
サウンドはバキバキではなく、スラッシュサウンドのミドルを強調したような太い音である。
Slipknot
Slipknotのデビュー作『Slipknot』、2nd『Iowa』は新たなメタル時代の扉を開けた名作だと思える。
いわゆるKoЯnの真似事をするフォロワーに対して終止符を打たせたような、本質を見直せと言わんばかりの完成度だ。
この2枚をロス・ロビンソンはプロデュースしており、自身が設立したレーベル「I Am Recording」からデビューさせた。
当時暇があればレコードショップへ行っており、プロデュースがロス・ロビンソンで見た目が「コレ」なら間違いないだろうと思って1stを買った記憶がある。以降の活躍は周知の通り。
2ndではややミドルが強くなっているように聴こえる。
ジョーイのバスドラはどちらもバコバコ鬼強調。
Amen
99年、Slipknotに続き『Amen』で「I Am Recording」からデビュー。『We Have Come For Your Parents』『Join, Or Die』もロス・ロビンソンがプロデュースしている。
これまでメタル系を主にプロデュースしてきたが、Amenはハードコアパンク色が強いバンド。
ハードコアなプレイにSex Pistolsのジョニー・ロットンのような歌い方で決してポップではないアナーキーなハードコアパンクである。
日本では知名度に欠けるが、英語圏ではフェス出演や雑誌によく出ていた。
オススメは『We Have Come For Your Parents』で、キャッチーさに磨きがかかり全体的にバランスが良く、聴くたびに「Scream」や「ラストサマー」みたいなちょっとポップなスラッシャームービーに合いそうだと思う。
Glassjaw
1st『Everything You Ever Wanted to Know About Silence』(2000年)2nd『Worship and Tribute』(2002年)をプロデュース。
この時期ロス・ロビンソンが探していたのは自らが一部を作り上げたニューメタルムーヴメントの駆逐だった。荒れた畑を耕し、新たな種を探していた。
そこに焦点が当てられたのがポストハードコアバンドとして実力のあるGlassjawやAt The Drive-Inらだった。
この頃からロスが手がける作品のジャンル幅は徐々に広がっていった。
Glassjawはポストハードコアの中でも難解度が高く、中毒性のある作品が出来ていると思う。特に『Worship and Tribute』は前作を遥かに上回る出来だと思う。
glassjawの機材
特に特徴的な音を出すのがギタリストのJustin Bech。
glassjawのインパクトあるイメージは、リズム隊と曲の構成とこのギタリストの音で成り立っているかもしれない。
このglassjawのJustin Bechの機材を確認してみた。
ギターは
- Stingray RS (セイモア ダンカンにリアPU変更)
- Fender Stratocaster HSS
- Gibson Les Paul Classicなど (PUはEMG81が多い)
となっている。
アンプは
- Kemper
- ヒュース&ケトナー
エフェクター
- CryBaby
- Line6 POD
クライベイビーのワウの使い方がサイケデリック!そう、ハードコア・サイケデリック!
At The Drive-In
前述したGlassjawと同じ年にリリースされたAt The Drive-Inのメジャー作『Relationship of Command』。
これまでに聴いたことのないギターサウンドに驚いたが、リリース前から注目を集めていて雑誌では高評価を得ていた。
このアルバムにてロス・ロビンソンが目指していたニューメタルムーヴメントの駆逐は成し遂げられたのではないだろうか。それほど完成度の高いアルバムだ。
彼らのライヴでは確かモッシュ禁止だった気がする。
The Blood Brothers
03年、ポストハードコアバンドThe Blood Brothersの3rd『…Burn, Piano Island, Burn』をプロデュース。
ひたすら叫びまくるブッ飛んでいるバンドでGlassjawやAt The Drive-Inと比べるとパンク色が強い。だがサウンドは共通している部分があり、もはやこの手のサウンドはロスらしくもある。
The Cure
ロス・ロビンソンがThe Cureのプロデュースをするという驚きの発表があり、04年にリリースされたのが『The Cure』。結成26年目にして初のセルフタイトルが冠されたアルバムで、前作『Bloodflowers』が良すぎたのでどんなアルバムになるのだろうと思われた。
それはシンプルな原点と近年の混沌とした世界観が入り混じった、これまでにない全く新しいThe Cureだった。陰鬱・妖艶・ポップ感もあり、The Cureの良いところはしっかりと拡張され、抜けの良いサウンドになり完成度の高いアルバムとなった。
ただ初期のThe Cureが好きな人は受け入れられないかも、とも思える。
ロスがプロデュースするという情報が出たとき、3作くらい作ると言っていた気がするが気のせいかな?
Idiot Pilot
オルタナロックデュオIdiot Pilotの2nd『Wolves』はロス・ロビンソンとBlink-182のマーク・ホッパスとの共同プロデュース。
日本での知名度は低いが、プログラミングでエレクトロを多用し、高度なソングライティングスキルを持っており幅広い音楽性が魅力。
MUSEのマシュー・ベラミーのような伸びやかな歌声と美しくも激しいエモーショナルロックが様々な情景を映し出す。
『Retina And The Sky』という曲が映画「トランスフォーマー」のサウンドトラックに提供され知名度が広がった。
『Wolves』は非常に完成度が高く、名盤。
Klaxons
自らニューレイヴというジャンルを提唱したイングランドのエレクトロニカ・ロックバンドKlaxonsの2nd『Surfing the Void』。
1stが全英で爆売れし、前作に引き続きジェームズ・フォード(アークティック・モンキーズ等)をプロデューサーとして制作していたが、「難解で非商業的すぎる」とそれを破棄。そして意外なことにロス・ロビンソンと制作し直すこととなった。
前作ほどのインパクトは感じないが、軸はブレずにハードでエッジの効いたサウンドと彼らの少しほろ苦いようなメロディーがしっかり保たれた作品であった。
Hyro Da Hero
デビュー作『Birth, School, Work, Death』をプロデュース。
フロントマン、ハイロ・ダ・ヒーローを中心に、Idiot Pilotのダニエル・アンダーソン(g)、At The Drive-In/Sparta/Mars Voltaのポール・ヒノジョス(b)、元Blood Brothersのコディー・ヴォトラト(g)とマーク・ガジャダー(ds)からなるオルタナロックバンド。
RAGE AGAINST THE MACHINEの精神を受け継ぐバンドとして登場し、ザックそっくりなMCが特徴的。
メンバー各々がこれまでロス・ロビンソンと仕事をしてきており、デビュー作でのタッグは自然な流れと考えられる。
レイジがポストハードコア化したような感じでカッコいいです。
Soko
女優としても活動するフランス人歌手Soko(ソーコ)。
彼女の2nd『My Dreams Dictate My Reality』をプロデュース。
当初は彼女の好きなThe Cureのロバート・スミスに制作の依頼をロスを通じて頼んだらしいが、結局ロスが制作することに。
The CureっぽいPOP感もあるが、やはりフランスのヴァネッサ・パラディのようなドリーミーな雰囲気を全体的に感じます。たまにLibertinesっぽい歌い方をします。
一番意外なコンビです。
Night Verses
ポストロック/ポストハードコアバンドNight Versesの2nd『Into the Vanishing Light』をプロデュース。
どこかAt The Drive-Inにも通じるエモーショナルな歌声が特徴的。
1stとは変わってダークなアンビエント要素が全体的に締めており、空間系を多用した幻想的な曲が多い。
実際At The Drive-InやBjörkに影響を受けているようなので納得のサウンド。
ざっと紹介してきましたが、ロス・ロビンソンのロック界への貢献はとても大きいと感じました。
またプロデューサーという仕事の、バンドに必要とされること、ヒットへと導く制作方法というものに興味をもちました。
他のプロデューサーもまとめてみます。
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